自治体と民間の連携による成果のあがる事業推進

私は、発注者と受託者という立場を理解した上で、その枠組みをいかに超越した成果の創出(コミュニケーション・企画提案・実行実施)を行うかが大切なポイントと捉えています。

 

2021年に関らせていただいた「太平洋無着陸横断飛行90周年事業」は、コロナ禍で日常生活以外の行動制限が強いられる中、取り組みを停滞させない事業推進のアプローチ例として多くの反響をいただきました。

 

長年ミス・ビードル号による世界初「太平洋無着陸横断飛行」達成という事実情報のみが成果として語り継がれてきた本件に対して、我々が最初に提案したことは、現代人がこの偉業の達成から何を学び、何が明日への力に変わるのか?という自分事として捉えてもらうきっかけづくりです。

その背景には、90年という時間の経過による語り部人材の不足という課題もあります。

 

そこで、発注者メンバーにそれらテーマを投げかけ、官民連携チームとして熱量高く議論して今回の標語を導きだしました。

 

「挑戦する勇気、夢支える雄志」

 

これは、90年前のまだ外国人の存在が珍しかった時代から存在している三沢の多様性文化を表現し含んだ本事業の軸となる言葉です。より単純化するならば、「挑戦者もヒーロー、挑戦者を支える者もヒーロー」ということです。三沢人がもつアイデンティティにも通じる言葉と考えています。

 

また、年々当時を知らない人々が増えている中、語り部人材の育成には、ICTを活用したウェブ教材の整備を提案しました。教育現場の人手不足や生徒の多忙という課題、学校でタブレット端末が各人に割り当て導入された事なども踏まえて、本事業だけの単独行動になることなく、地域との横型連携も意識した周知浸透定着行動も提案にまとめています。

 

事業の目的達成に向けた軸が定まれば、あとはエンターテイメント性あるPRツールの整備を展開していく事になります。パイロット気分の写真が撮れるバス「ミス・ビードル号」もその一つです。一般的な広告手法「ラッピングが施された派手な乗り物」の整備ではなく、利用者メリットを全面に押し出した「自分が乗りたくなる!」「子供を乗せたくなる!」をキーワードにまとめたPRツールです。同時に、車内は歴史ヒストリーの情報インプット場所「車内教室」として展開し、遊びながら学び知らず知らずに語り部人材の育成が進む工夫も施しています。

 

歴史・前例・実績などは十分理解したうえで、既存の概念に囚われることなく目的に向けた最善最適な行動指針を提案することが、新たな概念「ニュースタンダード」を生み出し、それが次なる既存概念「スタンダード」として定着し、地域課題の前進につながると信じています。